尚之君!

2003年6月29日
 躯が、冷めた彼女は僕の胸に抱かれている。

 低体温症に罹っている彼女は、その透き通るような肌を、一層浸透深く・・・


 かくゆう僕も、青タンだらけで全身にある傷口からは血がにじみ出る。

 耳からも少量の血が流れていた。
 「フー・・もう、体力ないや」

 弱弱しく独り言を云う少年。

 少年少女の座っている場所は荒廃とした場所で、瓦礫で出来た壁にもたれていた。

 その少年たちの眼の前に、長さ3?直径1?のボトルが数個転がっていた。

 封が解かれ、中身がない。貼ってあるラベルに、“タンパク質変換RNA”“ベクトル・アンチミラーゼ”と薬品用語を印刷してある。

 自分の手を見る少年。

 血で汚れ、BSの切断したチューブから噴出したブラック・オイル・オイリーも付着していた。

 自分の胸に顔を埋めている少女の頭を撫で、少年は少しの仮眠を済ませる。

 

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